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01
2003

東京シューシャインボーイ

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ごっちんの投げた手榴弾は青空に放物線を描き、
山崎の頭上で爆発した。「どぐれぁぁッ」
途切れた絶叫の後、肉片が辺りに降り注ぐ。

「やったぁ!!」
AK-47アサルトライフルを構えた辻ちゃんが拳を上げる。

なんて美しい姿だろう。
僕は戦場だと言うのに、「ウィアラ」のことを思い出した。
さいたまスーパーアリーナ……500レベル……4連戦……。
「なにやってんのっ、まだ敵がいるのよ!」ぼーっとしていた僕は、
腕を引っ張られ岩陰に引きずり込まれた。圭織だ。
圭織のフェイス・ペインティングを見て、僕はまた「ここいる」を
思い出しそうになったが、死にたくはなかったので身を伏せた。

「ご、ごめん…」砂を噛みながら僕は言った。
「もう、なんで女の子の方が守らなきゃいけない訳ッ!?」
「そ、それは男がこっちに一人しか居ないからじゃないか…」と、僕
が言う前に、もう圭織は照準を敵のヲタに合わせていた。
あんなハッピだの特効服だのを着ていたら、わざわざ的になるような
ものだと思うのだけど、彼らはそれを脱ごうとしない。
やはり、彼らは藤本に操られているのだろう。
思い出せよ、お前ら。2001年のモーニング娘。を…。

僕はそんな風に何も出来ずに、身を縮こめて圭織の横顔を眺めていた。
遠くには、同じように岩陰から敵を狙い撃つよっすぃーが見えた。





「かんぱーい!!」
山崎を仕留めたのが相当大きかったのか、その夜は祝賀会(のようなもの)が
開かれた。僕はこの島に来て、奴隷生活から解放されてからの初めての酒を飲んだ。
張りつめていた糸のようなものが緩み、僕はなんだか、これまでに無いような愉快
な気持ちになった。

よっすぃーや、加護ちゃんや、りかっちが、まりっぺが目の前にいる。
そして、酒を飲んで笑っている。僕はミルトン・バナナの「バランサンド」が
聴きたくなったが、次の瞬間僕は「MASH」のサントラを思い出した。
あのバカバカしさと、悲しさ。

……さあ~さ、皆さん東京名物とってもシックな靴磨き~♪
何人が歌ったのかも分からないインチキ日本語。

僕は心の中で「東京シューシャインボーイ」の歌詞の続きを口ずさみながら、
酒を煽った。


 僕の好きな あのお嬢さん
 今日は まだ来ないけど  

 きっと 彼女は来てくれる
 雨の降る日も 風の日も


僕はすっかり酔っぱらって、無意識に辻ちゃんを見た。
今まで妄想の中に居た娘。達が、目の前に居る。僕は娘。達と同じ時間を過ごしている。
かかっている音楽を(それは僕の知らない音楽だけど)、僕達は一緒に聴いている。
ああ…「MASH」のサントラ持ってきてたっけな……。と、いきなり背中を叩かれた。

「よぉ、飲んでっかぁ!!」

圭ちゃんだった。目が座っていた。
僕は、瞬時に今まで圭ちゃんに捧げた妄想とビールの本数を思い浮かべた。
が、涙は出なかった。