Ao Amigo Tom
こんこん、こんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこん…。
小学生の時に行った、長野の塾の合宿所。
塾長が自分で作ったって言う、木造の広い家。アスファルトを青大将が這って
いるな、そんな環境は都会しか見たことの無い小学生には刺激的だった。
そこに、僕達と娘。達は居た。
黒い長机を囲んで(勉強にもその机を使っている)、僕達はご飯を食べていた。
みんな、気を使わない仲間達だから、Tシャツにショートパンツみたいな
色気の無い格好をしている。色気の無い格好と言っても、隣の御釜にご飯を
よそいに来たりかっちのパンツからすらりと伸び出た脚や、無防備な脇下の
隙間は僕に夏の罪を感じさせた。それは、特にその合宿で「感じてはいけな
いこと」のように僕には思えたから、僕はそれから目をそらし、りかっちの
顔を見つめた。りかっちは、机を横断した無理な体勢で御釜からご飯を装っ
ているから、僕の目の前にその顔は在った。りかっちは僕の視線や鼓動に
全く気づいていない様子だったが、僕はやはり耐え切れず、りかっちの頭の
端に見える、圭織に視点を合わせた。圭織はご飯を頬張っていた。圭織の
このような無邪気な表情は、久しぶりに見たような気がする…。
そして、僕の隣にはこんこんが居た。
こんこんと僕はその塾の中でも特に仲の良かった方では無いと思うのだけど、
そして、何のきっかけだか忘れてしまったのが今でも悔しいのだけど、とに
かくひょんなことから、こんこんと僕の会話のリズムは弾み始めた。
僕が言うことにこんこんがわくわくしているのが分かったし、こんこんの
言葉のリズムは僕の心を和ませた。
いつ買ったのか、その木造の合宿所には不似合いな液晶のモニターをこん
こんは僕の目の前に置いた。そして、こんこんは彼女の作ったFlashを僕に
見せた。何の番組だったか忘れたが、彼女がLiFEだかそのようなソフトを
使ってFlashを作る企画があって、それに僕は不思議と胸を打たれ、その
Flashから音だけを拝借し、お遊びで娘。remixを作ったりしたのだ。
「へえ…それはすごいねぇ…」「すごい、すごい」と圭織や他の娘。達は
言った。娘。達は自分たちの影響力をそれ程理解していないようだった。
いや、そういうことに対して、意識的に(無意識的に)無頓着なのかも知れない。
話をしている間、こんこんの白いノースリーブと、その肩の曲線は何回も
楽しそうに上下した。僕は嬉しかった。こんこんの無防備な笑顔をいつま
でも見ていたいから、僕の言葉もいつもからは考えられない程溢れ出たの
かも知れない。こんこんと僕の距離は、いつの間にか、すごく縮まっていた。
ものすごく、物理的に縮まっていた。あひる座りをしたこんこんの肌がすぐ
そこに在るのが、僕の肌で分かる。実際に、少し眼を閉じてみても、こん
こんがそこにいるのが分かった。
圭織や他の娘。達は、液晶モニタから離れ、またそれぞれ思い思いの話や
ゲームに戻っていった。また少し、こんこんと僕の距離は縮まった。
会話が途切れたのと同時に、だんだんと胸の高鳴りだけに全身が支配されていった。
僕は、この短い間にこんこんのことを、完全に好きになってしまった。
こんこんはそこを動こうとしなかった。
少し、不安そうな表情がそこにある。愛おしかった。愛おしくてたまらなかった。
一瞬、加護ちゃんのことを考えた。
彼女の姿は、さっきから見当たらなかった。僕は、加護ちゃんに謝った。
□
その瞬間、意識は反転し、気づくともう現実の中だった。
再生したのはヴァーリの"Ao Amigo Tom"。1時間も経っていないのに
夢の感覚はもうこんなにも薄れてしまった。また、僕は一人の娘。を………。
小学生の時に行った、長野の塾の合宿所。
塾長が自分で作ったって言う、木造の広い家。アスファルトを青大将が這って
いるな、そんな環境は都会しか見たことの無い小学生には刺激的だった。
そこに、僕達と娘。達は居た。
黒い長机を囲んで(勉強にもその机を使っている)、僕達はご飯を食べていた。
みんな、気を使わない仲間達だから、Tシャツにショートパンツみたいな
色気の無い格好をしている。色気の無い格好と言っても、隣の御釜にご飯を
よそいに来たりかっちのパンツからすらりと伸び出た脚や、無防備な脇下の
隙間は僕に夏の罪を感じさせた。それは、特にその合宿で「感じてはいけな
いこと」のように僕には思えたから、僕はそれから目をそらし、りかっちの
顔を見つめた。りかっちは、机を横断した無理な体勢で御釜からご飯を装っ
ているから、僕の目の前にその顔は在った。りかっちは僕の視線や鼓動に
全く気づいていない様子だったが、僕はやはり耐え切れず、りかっちの頭の
端に見える、圭織に視点を合わせた。圭織はご飯を頬張っていた。圭織の
このような無邪気な表情は、久しぶりに見たような気がする…。
そして、僕の隣にはこんこんが居た。
こんこんと僕はその塾の中でも特に仲の良かった方では無いと思うのだけど、
そして、何のきっかけだか忘れてしまったのが今でも悔しいのだけど、とに
かくひょんなことから、こんこんと僕の会話のリズムは弾み始めた。
僕が言うことにこんこんがわくわくしているのが分かったし、こんこんの
言葉のリズムは僕の心を和ませた。
いつ買ったのか、その木造の合宿所には不似合いな液晶のモニターをこん
こんは僕の目の前に置いた。そして、こんこんは彼女の作ったFlashを僕に
見せた。何の番組だったか忘れたが、彼女がLiFEだかそのようなソフトを
使ってFlashを作る企画があって、それに僕は不思議と胸を打たれ、その
Flashから音だけを拝借し、お遊びで娘。remixを作ったりしたのだ。
「へえ…それはすごいねぇ…」「すごい、すごい」と圭織や他の娘。達は
言った。娘。達は自分たちの影響力をそれ程理解していないようだった。
いや、そういうことに対して、意識的に(無意識的に)無頓着なのかも知れない。
話をしている間、こんこんの白いノースリーブと、その肩の曲線は何回も
楽しそうに上下した。僕は嬉しかった。こんこんの無防備な笑顔をいつま
でも見ていたいから、僕の言葉もいつもからは考えられない程溢れ出たの
かも知れない。こんこんと僕の距離は、いつの間にか、すごく縮まっていた。
ものすごく、物理的に縮まっていた。あひる座りをしたこんこんの肌がすぐ
そこに在るのが、僕の肌で分かる。実際に、少し眼を閉じてみても、こん
こんがそこにいるのが分かった。
圭織や他の娘。達は、液晶モニタから離れ、またそれぞれ思い思いの話や
ゲームに戻っていった。また少し、こんこんと僕の距離は縮まった。
会話が途切れたのと同時に、だんだんと胸の高鳴りだけに全身が支配されていった。
僕は、この短い間にこんこんのことを、完全に好きになってしまった。
こんこんはそこを動こうとしなかった。
少し、不安そうな表情がそこにある。愛おしかった。愛おしくてたまらなかった。
一瞬、加護ちゃんのことを考えた。
彼女の姿は、さっきから見当たらなかった。僕は、加護ちゃんに謝った。
□
その瞬間、意識は反転し、気づくともう現実の中だった。
再生したのはヴァーリの"Ao Amigo Tom"。1時間も経っていないのに
夢の感覚はもうこんなにも薄れてしまった。また、僕は一人の娘。を………。