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06
2003

室蘭モナムール

CATEGORY普通日記
我々萌えバイキング一同は、 予定通り定刻にその島へと上陸した。

繰り返す、我々は萌えバイキング。
我々の萌え活動に抵抗する奴は一切容赦しない。
なぜなら、ここはあまりに我々の存在の根源に関わる土地であるからだ。





色んな建物や土地を見た。
橋を渡り、見たこともない巨大な工業地帯を眺めつつ、Oエリアへと降り立つ。
どうしようもない寂寥感。要塞のような小学校。ありふれた団地。切り立った
崖や、その真下にある廃虚。崖にも様々な種類が有り、別エリアの小学校の真
横には、まるで特撮のヒーローが5人並んでこっちに向かって飛びかかってき
そうな崖があった。その真下にもやはり、奇妙な建物が並んでいた。黄色、赤、
青、緑…のカラフルな民家。特撮のヒーローはこの家に住んでいると言うのだ
ろうか。そして、彼女が居る時に、ここはどういう風景だったのだろうか…。

我々萌えバイキングは、そのような、言葉にしにくいどうしようもない悲しみを
肌に感じながら、笑った。我々は、私は、ある意味では幸せであったからだ。
その悲しい街を、私一人では多分受け止めることはできない。





我々は、浜で木の棒を振り上げ、走った。
その浜も、やはり寂しい浜だった。空は灰色で、得体のしれない老人が何かを
燃やしているのが見えた。我々は、叫び、踊った。遠くに鯨が見え、それを捕
獲しようと思ったが、船が無いのに気づき、それをやめた。

我々は、その物体を岩ではないのか、と話し合った。
そして、後日それは岩であったことが判明した。
そして、彼女もそれを知っていると言うことだ。





そして、もう一人の彼女が見せたいと言った土地に、我々は降りた。
彼女も足を踏み入れただろう公園。

私は、そこに生えている木がポプラであると言うことを初めて知った。
私は、その奇妙な枝に触れようと思い、すれ違いざまに手を伸ばしたが、
それは届かなかった。

私は、洞窟の中にも入った。
その最深部には、なぜか我々の同胞の名が刻まれていた。私は、しばらく
会っていない彼の顔を思い浮かべた。洞窟の中には、もう一人の彼女の愛称
も刻まれていたので、私はその愛称の横に彼女の本名を刻みつけた。

そして、悲しくなった。
彼女もまた、私の中ではこのような風景でしか無いのだ。少なくとも、今の
ところは。私はもっと彼女のことを見たいし、もっと彼女のことを知りたい。
しかし、私に、我々に与えられた活動範囲では、知りたいと思うことを知る
ことはできない。そして、ここは彼女に関係の無い土地だ。


そして、その彼女のことも、私は多分…。





もう一人の彼女と、もう一人の彼女の町は驚く程近かった。
彼女達は同じ風景を見て同じ風を感じ、同じような寂しさを味わったのだろうか。
私には、私のできるように想像するしかない。しばらく前に、もう一人の彼女とは
話をする機会があった。彼女に昔抱いていた恋の感覚は消えていた。私は、彼女に
訳の分からないことを喋った。もし私が彼女に恋をしていたなら、同じような訳の
分からないことでも、意味合いが少しは変わっていたかも知れない。


全ての想いは、このように薄れていくものなのだろうか。
そのように彼女のことを思い出す。しかし、昔感じた胸の痛みは、海の底に沈んだ
みたいに鈍く心に響く。そして、町並は、風景は、その気持ちを優しく、悲しく包む。





雪虫という虫を、同胞が教えてくれた。

その虫を見ると、雪が降るのが近いらしい。尻に、白い綿のような毛がついていて、
とても可愛い。その虫は「飛ぶ」と言うよりは「漂う」と言った方が正しいくらいに
ふわふわと宙を彷徨っていた。その儚い虫を僕は捕まえようとしたが、私には同胞の
ようにふわりとそれを捕まえることが、どうしてもできなかった。





その街に抱いた奇妙な感慨はたぶん、性差を超えたものだった。
私は、性差によるコンプレックス、そしてそれによって産まれた妄想を克服できず、逆に
年を追う毎にそれに悩まされ続けている。私が憧れれば憧れる程、その存在は離れていき、
そして、現実のレベルでその存在が失われようとしている。時間の経過によって感覚は麻
痺し、それが本当のことなのか、私には分からなくなってくる。彼女は今日もこうして
私の前で微笑んでいるからだ。

しかし、私はこの島に降り立ち、彼女がいつまでも彼女であり続けるであろうことが、分かった。
いや、分かったと思ったのかも知れない。しかし、一つ分かったことがある。
私は私であり続けなくてはならない。自分勝手な言い方で言えば、彼女がこんなにも美しいから、
私はこんなにも気持ち悪い人間になってしまったのだ。そして、その「気持ち悪い」と言う概念は
他者から私に与えられたものであるに過ぎない。彼女と私は、限られた関係の中でしか、会えない。
だとすれば、自分が感じたものを信じるしかない。自分が感じた彼女を信じるしかない。

そして、現実の中でその感覚はどうしても失われていく。
彼女は自分を抱きしめてくれないし、自分は彼女を抱きしめることもできないから。
でも、彼女はあるコンサートでそう言ってくれた。彼女が言うなら、それは真実なのだろう。

求め合う心で、それを感じ取るしか無い。
そして、私は私の文脈で彼女を求めたい。私は喋るのが得意では無いし、人よりは少し得意な
文章も、いつからか破綻してきている。しかし、私はこのようにして自分の彼女に対する思い
を確認することしかできないのだ。………確認し、整理し、自分の混乱を鎮めることしか。

そして文章を書き終えた時、私は、彼女を求めることが、自分が彼女に何を求めているのかを
ほんの少しだけ、掴み取ることができる。





自分を世界と切り離しつつ、自分性を他者に求める。
そのような行為を、彼女は多分肯定してくれるはずだ。

その地を離れ、私はいつものようにまた被害妄想と疑心暗鬼の沼に取り囲まれようとしている。
しかし、その地で感じた彼女を、彼女の寂しさを、そして、それを同胞と共有した記憶がある
分だけ、私は以前とは違う。

目を閉じて、いつもより彼女の温かさを感じることができる筈だ。