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17
2001

雨は毛布のように(2)

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朝の新宿。
ヒップ・ホップ。パンクス。お水。合コン。モーヲタ。

僕はキリンジを聴きながら窓の外に目をやる。
僕は、ニッキモニで石黒彩に殉じる決心をした。そして石黒彩の欄には僕の名前がある。
彼女は脱退した。デザインの勉強をすると言うことだった。その時彼女は妊娠していた。
だけどそれは、殆ど話題にならなかった。僕は雨を眺めるように無力に、石黒彩のことを
考えた。そしてそれはなんの役にも立たなかった。彼女が今何をしているのか僕は知らない。

電車が池袋に近づく。彩とよく一緒に来た街だ。
僕は彩をレコード屋の買い物に連れ回した。彩は猫背で僕についてきた。
夕方になると、僕らは安い居酒屋に入ってビールを飲んだ。ビールと言っても大概はその中身
は発泡酒だった。でも僕らは楽しかった。帰りの電車の中で、僕らは肩を寄せあって眠った。
そして僕の家に着くと、手を洗って、二人で並んで歯磨きをした。そしてセックスをした。
しない時もあった。その後、僕らはすぐに眠った。

僕らは別れた。
彩はもういない。少なくとも、僕の知っていた彩はいない。最近は電話もしていない。僕は
ぼうっとした頭で、階段へ吸い込まれる群衆の中に彩を探す。あの、親密な後ろ姿を探す。
もちろん、彩はいない。電車は走り出す。

僕は車内を見回す。大きい黒人が二人、隣に座っている。目の前には、ヒップホップ好きそ
うな少年がいる。僕はその少年越しに、見慣れた外の風景を眺める。電車が西日暮里へ到着する。

彩はいつも、ここで千代田線から山手線に乗り換えて僕の家へやってくる。いや、やってきた。
別れた後、僕は何の因果かこの駅で山手線から千代田線へ乗り換え、仕事場へ向かうことになる。
駅には毎日決まった時間に、ツイスト・パーマをかけた男子高校生がやってくる。そしていつも
違う女の子と話している。僕はいつもウォークマンでキリンジを聴いているので、話の内容は知
らない。でも男子高校生はいつも楽しそうにしている。女の子も。

僕には彩の後ろ姿が見える。雨は降り続き、僕はキリンジを聴きながら、傘をさしながらバス停へ歩く。

バスへ乗り、発車時刻まで隣の建築現場の作業風景を眺める。
作業員達はゆっくりと、だが確実に仕事をこなしていく。僕の隣りの女子高生が携帯で友達と話し
ている。僕は彩のことを思う。仕事仲間達の笑い声がヘッドフォン越しに聴こえる。

雨は静かに降り続き、彩は帰ってこない。僕はそんな毎日を繰り返す。
男子高校生は笑う。僕は目を閉じる。彩の後ろ姿は残像となって僕の瞼の裏にちらついている。
僕は「雨は毛布のように」をリピートする。