好きな女の子を遠くから見ながら音楽を聴くことはあるかい
僕はある。
X太郎さんが寝てしまったから、僕はビールを飲みながら昨日の舞美さん
のことを思い出している。
流れているのはアレッシーの"Oh,Lori"。僕が高校生の時に文通していた
おじさんに教えてもらった曲なんだ。そのおじさんにはとても色々な曲を
教えてもらった。でも僕が本格的にバイトを始め、大学生になり、色々
やることが増えて、そのおじさんに手紙を出すことはなくなってしまった。
15年経って、僕はそのおじさんのことを思い出しながら、舞美さんに
初めて手紙を書いた。音楽のことは書かなかったが、CD付きだ。僕の
大好きな曲。おじさんと交換していたのはCDではなく、カセットテープ
だった。1994年か1995年か。
2009年。僕の手紙は舞美さんに全く届いていなかった。
「うたかさんからは、あの、えっと、ちょっとわかんないです」と、テン
バった舞美さんはものすごく申し訳なさそうに言った。
それでも、正直に言ってくれたことが嬉しいし、当たり前に名前を覚えて
くれているのが嬉しい。いつも緊張して舞美さんとの握手は失敗ばかりして
いるけど、でも、少しずつ、確実に前に進んでいることが嬉しい。
いつまでこの関係を続けられるのか分からないけど、「ずっと好きだから!」
と言ったら舞美さんは「頑張ります!!!」と言ってくれた。それを思い出す
だけで胸がいっぱいになる。どうしても言いたかった、910の日に舞美さんが
言ったことに対しての返答。舞美さんは本当に、本気で答えてくれた。
不意に流れてきたキリンジの「汗染みは淡いブルース」が舞美さんのための
歌ではないかと妄想する。汗だくの、いつも一生懸命な舞美さんを思い出す。
あと一時間くらいしたら夜が明ける。
舞美さんはバスツアーの時みたいに、ランニングをするのかな?
舞美さんの努力には全く敵わないけど、僕も舞美さんに対する感情を整理
するために朝まで頑張ったんだ。書いては消し。書いては消して。
いつか、すべてを舞美さんに伝えられるようになりたい。
ゲキハロで梨沙子が言っていたように、僕は時間を止めたいんだ。
そしたらもっと舞美さんにうまく気持ちを伝えられるかも知れない。