O

久しぶりに舞美さんが夢に出てきた。
僕はいつも舞美さんが夢に出てくる度色めきたつが、その夢では舞美さんは僕の中学の
同級生のOと交際しているようだった。僕はそれを見てとても悲しくなった。僕が悲しくなっ
てからも、舞美さんはずっと笑顔だった。いつもの舞美さんの、とても素敵な笑顔だった。
でも僕がそれに関わることはない。それは僕のためのものではない。夢の中でも、僕と
舞美さんは月より遠く離れているように思えた。
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仕事の打ち合わせの帰り道、生温かい風が吹いていて、なぜか恋人のことを思い出した。
急に人肌が恋しくなった。とても恋しくなった。叫びだしたいくらい恋しくなった。声を上げて
泣いて、地面に転げ回ったら誰か来てくれるかなと思ったが、しなかった。
昔の恋人と、舞美さんのことを交互に妄想した。
僕にはもう何がなんだか分からなくなっていた。心の中で、舞美さんと恋人に交互に話し
かけた。でも、妄想の中でさえ彼女たちからの返事はなかった。
僕はただ人肌が恋しかった。誰かと裸になって肌を合わせたかった。
あの温もりが、どうしようもなく欲しかった。でも、僕がそれを手にすることはもう二度とない
だろう、と僕は思った。それが現実だった。
Oと仲良くしている舞美さんの笑顔が頭をよぎり、僕はまた深く絶望した。