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03
2008

音楽が終わったら

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花見の帰り道。
梨沙子が明日誕生日であることなどを考えつつ、喧噪に背を向け歩いていくと僕の他にはもう
辺りを歩いているものは誰もいなくて、僕のヘッドフォンからはルイス・シスターズの"Just Friends"
が流れていて、それまで居た公園はカップルだらけだったから、また昔の恋人のことを思い出した
りしていて、泣きそうになっていたのだが、行く先に二人肩を寄せ合う影を見つけた。

その道には、僕とその影以外には何もなく、ただ街灯が二人の影を美しく照らしていた。
二人の影はとても美しく、僕はまた昔のことを思い出していた。コートとコート越しの感触や、つな
いだ手の、マニキュアのつるつるした感触。歩幅。"Just Friends"でさえもない。僕はあの頃とは
違う惑星にいるのかも知れない。

そんな風にして嫌な予感が高まってきた瞬間、二人の影が重なった。
立ち止まり、抱擁し合う二人の横向きの姿が見えた。僕はそれを美しいと思った。
そして、寂しいと思った。今、梨沙子は今何をしているのだろうと思った。

二人の顔は見なかった。
30歳になってしまった自分のことを思った。あんな恋人は僕にはもう出来ないだろう。
そう思うと、もう梨沙子の思い出と共に死んでしまいたくなった。梨沙子の夢はいつも幸せで
リアルだ。どうして梨沙子だけがそうなのか全く分からないけど、梨沙子の夢の感触だけを
ずっと覚えている。その続きが見られるなら、そのまま目が覚めなくていいとも思う。





帰り道は僕だけが知っている桜の名所を歩いた。誰も居なくて、綺麗だった。
最後の名所では、老人達が別れの挨拶を交わし合っていた。

僕は肌の感触のことを考えていた。
何の音楽を再生しても心に響かず、僕は僕の心が完全に凍り付いてしまったことを知った。

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