落第
高校の授業中、作文を朗読していた彼女が突然僕を罵倒し始めた。
「ウタカ君は、**の癖に**で…」それはとても屈辱的な言葉だった。僕は驚きとともに
激しい怒りに包まれ、筆箱を壁に投げつけ席を立った。涙が出そうだったが、みんなこちら
を見ていたので我慢した。僕は彼女に向かってろれつの回らない舌で捨て台詞を残し、
教室を飛び出した。
担任ではない、違う学年の教師が僕を追いかけてきて、訳を聞いた。
僕は歩きながら、彼女の取った理不尽な行動について話した。僕は彼女を好きだった。と
てもとても好きだった。なのに、なぜあんなことを彼女がしたのかわからない。もしかすると、
僕が悪かったのかも知れない。でも僕はあんなことを言われることに耐えられなかった。そ
んなことを話しながら僕は泣いていた。教師は僕を怒る気はないようだった。彼は僕をなだ
め、なぜか僕を彼のクラスへと連れて行った。
そこはなぜか児童部のクラスで、丁度給食の時間だった。
教師は僕に給食を食べるように勧め、僕は児童の前の配膳台でご飯をよそって、開いてい
る席に着いた。席の後ろに、彼女が居ることに気付いた。僕を罵倒した彼女だ。
僕らは何度となく繰り返した、仲直りの言葉を交わした。
言葉が交わされるごとに混乱と怒りと悲しみは静かに優しく氷解していった。僕は、先ほど
の僕が起こした行動についての処遇を考えていた。そうだ、今は確か大事なテスト期間中
だったのだ。今頃みんなテストを受けているだろう。僕は追試を受けることになる。
でも、そんなことより彼女と仲直りできたことが何よりも嬉しかった。
僕はもう一人じゃないんだ。やっと、やっと長い孤独から抜け出せた。もう二度と一人には
戻りたくない。君と会えて、本当に良かった。
僕はまた泣いていた。
□
そこで突然目が覚めた。
全ては幻だった。
こういう夢は今までに何度も見ているが、いつも夢の中でこれは夢だと気付くことができない。ずっと抑圧し、防御し続けていた心の大切な部分をさらけ出したまま覚醒した僕の行き
場はどこにもない。優しい朝の光に絶望する。僕は本当にこのままずっと一人かも知れない。