絶望と自慰
今週のSPA!の最後のページに哀れな男の人生相談が載っていた。
その男は来年16歳になるアイドルとどうしても結婚したいのだという。人生相談の回答者は、アイドルは資本主義システムの産物であり、共同幻想の上に成り立つものであるから、あなたが結婚できることは絶対にない。もし強引に会おうとして誰かにケガでも負わせれば傷害の現行犯で逮捕され、下手をすると実刑になる。だからエロ小説を読んで自分の頭の中で妄想の女を造り上げ、自慰をしなさい。実在しない女なのだから、傷つけることもないし、自分の欲望を満たす事ができる、と答えていた。全く妥当な回答だと感じた。その哀れな三十路間近の男は、この回答を読んでどうするのだろう。怒り狂うだろうか。泣くだろうか。その通りに行動するだろうか。まあ、僕には関係のないことだ。
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その夜、舞美さんが夢に出てきた。
そこは海だった。舞美さんは黄色い水着を着ていて、下は砂浜だったから、海だったんだろう。僕は、「寝る子はキュート」の長さんのように、颯爽と舞美さんの手を引いて走った。そして舞美さんと二人きりになった。僕は舞美さんに告白した。もう一人になるのは嫌だ、と言った。君のことが好きなんだ、と言った。君がいない生活にもう耐えることはできない、と言った。しかし、顔を上げるとその女は舞美さんではなかった。似ても似つかない金髪の日焼けした女だった。しかし僕はなぜかまだ、その女を舞美さんだと認識していた。女に語りかける内、意識はまた暗い沼の底に沈んでいった。
起きるとまたいつもの孤独が待っていた。
しかし、舞美さんと会話をした感触のようなものがまだ身の周りを包んでいた。寂しかった。舞美さんと会いたかった。しかし舞美さんはそこにはいない。僕は悲観的な人間だから、彼女と結婚をしたいと強がっているだけなのかも知れない。本当はそんなこと絶対にないと思っているくせに。でも彼女から離れることができない。彼女の妄想から離れることができない。僕は彼女に、彼女達に依存している。
それはずっと前から分かっていたことで、それを踏まえてなんとかバランスをとりながらやってきた。何か問題がある訳でもない。寂しさが大きくなっていくだけだ。何千回自慰を繰り返してもそれは変わらない。むしろ酷くなっていく。でもやめられない。僕はそこで生きていくしかないんだ。