Suave De Samba
デルくんはせきねさんのスケブを手に({うたか欠席}と書いた1ページ)、
そして僕から舞美さんへの伝言を胸に大阪へ旅立っていった…。
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行きたいけど、俺借金返さなくちゃいけないんだ舞美さん。
いつか舞美さんと結婚することになって借金だらけじゃ困るだろう?
ということを書いていてもそろそろ空寒々しくなってしまうお年頃…。
最近は学生時代に戻ってキッズと戯れる妄想をしている内になんだか
どうしようもなくやるせなくなって止めて、忘れた頃にまた妄想して
止めて…と、そんな繰り返し。僕の頭の中にはまだあの子がいて、
あの頃と同じ百面相を見せてくれる。
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無声映画のように、何の言葉を発しているのかまでは僕の想像力は働
かない。そして、同じように僕が何を喋っているのかも分からない。
それが他愛のない会話であることは分かっている。しかし、彼女が
僕に向かって語りかけるその表情や、仕草は、僕がもう二度と手に
入れることのできないとても大切なものを含んでいる。それを想像
するだけで、思い出すだけで、僕の心は少し温かくなる。
どうしようもなく憂鬱で孤独な毎日で、そうした記憶だけが自分を
人間らしい場所へ導いてくれる。この間、℃-uteのDVDを見ていて
泣き出したXさんの気持ちが僕には分かる。僕らの胸が熱くなる時、
また彼女の胸も熱いはずだ。それは傷であり、悲しみであり、喜び
であり、戻らない時間であり…。
あの陽だまりのような日々を、僕はいつまでもいつまでも思い出している。