独り言
独り言が増えたという話は前にもしたかも知れないけど、相変わらず症状は酷い。
とりとめもなく再生する記憶のまま、自身が過去に呟いた科白の断片がつい口をついて
出てしまう。あとは意味もなくキッズの名前を呼ぶ。最近一番多いのはなぜか友理ちゃん
だ。友理ちゃんのことは好きだけど、2年前みたいに狂おしいほどの気持ちはなくなって
しまった。それなのになぜ友理ちゃんの名前を呼ぶのかわからなくて、でもそれはもしか
すると僕が舞美さんを好きになったことと、その前に友理ちゃんを好きになったことが
関係あるのかも知れないな、と思って、なぜなら2人はほとんど聖的と言っても良いほど
真っ直ぐで、汚れていなくて、そしてこの世界に対して希望を抱いている。
友理ちゃんに陽を、舞美さんに陰を感じる。
何がどうだということではないけれど、舞美さんの立ち居振る舞いをずっと見ていて、
やはりどこかに陰を感じる。舞美さんには、1人になった時にしか絶対に見せない顔が
あるような気がする。舞美さんはその陰に対しての慰めを求めている。あるいは、その
空白を埋める何かを求めている。しかし、舞美さん自身はまだそのことに気づいていな
い。舞美さんは努力によって、舞美さんの寂しさを克服しようと思っている。僕には
そんな風に見える。そして、その寂しさは年齢を重ねることによってより大きくなって
いく種類のものであるように見える。
寂しさは、絶望と言い換えてもいいかも知れない。
そして、舞美さんが絶望に抗う姿はそれが世界の終わりであるかのように美しい。
スポフェスの舞美さんの涙は世界一美しい。僕はその姿を前にただ言葉を失ってしまう。
それは、それが本当の舞美さんの姿だったからだと思う。舞美さんはいつだってニコニコ
しているけど、それは舞美さんの善意や慈悲によるものであることが多い。もちろん僕ら
はそれを求めてイベントに行ったりする訳だけど、舞美さんは僕らに笑顔が必要なことを
知ってしまったのだ。そしてそれを知ったら舞美さんは笑顔でいずには居られないのだ。
だから、どんなにぎこちない笑顔でも僕は舞美さんのことが可愛いと思う。
それを微笑ましく思う。それと同時に、もっと舞美さんのことが知りたいと思う。舞美さ
んの闇を知りたいと思う。そして、それを共有したいと思う。
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舞美さんと何十回も握手しておきながら、1人でいる時に一番舞美さんを強く感じる。
それでも僕は1人で居る時、友理ちゃんと呟いてしまう。そして、友理ちゃんと舞美さん
のことについて考える。答えはまだ出ていない。
テーマ : せつない。さびしい。恋しくて。 ジャンル : 恋愛