涙自慰
「私わかったの、寂しがりやだと」だとは分かっていました。
だけど一番最初に会場で聴き取れたその歌詞があまりに感動的だった
からそのままタイトルに使っているのです…。
□
結局僕は自分勝手な人間だから、こういう時には、ストーカーが撮った
だとか何だとか、全体としてそれを見ることができなくなってただその
一点のみを見てしまう。
□
僕の部屋では彼女は(彼女たちは)僕だけの恋人であり、別の顔を見せる
ことはない。僕だけと言葉を交わし、僕だけと愛し合う。僕のような
寂しい男には、妄想の中だけが恋愛の自由を保証される場所であり、
もうそんな場所に何年居るのか分からない。今まではそれで何とかや
ってこれたものの、年を取るごとに人肌は恋しくなり、その妄想の中
でさえも癒されぬ時が多くなってきた。僕は毎夜布団の中で絶望して
いた。舞美さんは僕の恋人ではない。めーぐるは僕の恋人ではない。
サッキーは僕の恋人ではない。オカールは僕の恋人では…。一度絶望
に陥ると、いくら彼女たちの温もりを想像しても寂しくなるだけだった。
□
いつの間にか、イベントに必死に通うようになった。Berryzの時でさえ
こんなに必死に遠征はしなかった。毎回、毎回、震え上がるような幸福
感を感じた。イベント、ライブを見た高揚感漂うまま握手会へと移る。
憧れの舞美さんが、めーぐるが、オカールが僕を覚えてくれている。向
こうから笑顔で話しかけてくれる。僕は僕の妄想以外から彼女たちに
愛を求めた。そして、彼女たちはそれを与えてくれた。あまりに麻薬的
なその儀式に、僕はたちまち溺れていった。現実の空間で彼女たちと
触れ合うことに僕は溺れていった。
□
しかし、それで現実生活の寂しさが癒されることはなかった。
家に帰れば僕は1人で、誰とも口を聞かずに仕事をし、1人で夕食を取り、
1人で酒を飲み、そして1人で寝るのだ。僕は時々、舞美さんがエプロン姿
で夕食を作ってくれる姿を想像した。想像の中で、舞美さんが包丁で指を
切らないかはらはらしたりもした。僕はその想像にいつものように、不思
議なおかしみと哀しみを感じた。あまりに現実とかけ離れた妄想。こんな
低収入で借金だらけの僕が家庭など持てる訳がない。ましてや舞美さんと。
しかし、僕はそんな妄想に耽り続けた。
めーぐるにはその種の妄想はしなかった。
めーぐると僕は妄想の中でひたすら堕落した生活を送っていた。僕らは布
団の中から動くことはなかった。僕らはただ愛を貪り、堕落を貪った。
溺れる、という感覚は(僕にとっては)めーぐるが一番相応しいかも知れない。
絶望に陥った時、誰と一緒に死ぬのかと妄想した時、そこにはめーぐるが
居た。僕は妄想の中で何度も、何度も、何度も彼女の肩を、背中を撫でた。
彼女を愛した。絶望に抗った。この場所で。
そして僕はこの場所でその画像を見た。
□
現実のめーぐると妄想のめーぐるがクロスし始め、僕は混乱し、笑いたく
なったり、泣きたくなったりした。その事実は、僕の錆びついた脳の配列を
何箇所も何箇所もつなぎ変えようとした。そして僕はこうしてまた酒を飲む
しかなくなっている。全てが記憶の沼の深くに沈んでいく。
□
もう何杯酒を飲んだのか分からなくなってきた。
ラス・バレンバーグの"Suave De Samba"が流れている。
めーぐるが恋愛をするということは、僕が妄想や自慰行為をすることと同じ
くらい自由なことなのだろう。僕はそれを止めることなどできはしない。
だけど、僕は最後の最後でまだ大人になりきれない。
夢で、恋人のままでいさせて。
だけど一番最初に会場で聴き取れたその歌詞があまりに感動的だった
からそのままタイトルに使っているのです…。
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結局僕は自分勝手な人間だから、こういう時には、ストーカーが撮った
だとか何だとか、全体としてそれを見ることができなくなってただその
一点のみを見てしまう。
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僕の部屋では彼女は(彼女たちは)僕だけの恋人であり、別の顔を見せる
ことはない。僕だけと言葉を交わし、僕だけと愛し合う。僕のような
寂しい男には、妄想の中だけが恋愛の自由を保証される場所であり、
もうそんな場所に何年居るのか分からない。今まではそれで何とかや
ってこれたものの、年を取るごとに人肌は恋しくなり、その妄想の中
でさえも癒されぬ時が多くなってきた。僕は毎夜布団の中で絶望して
いた。舞美さんは僕の恋人ではない。めーぐるは僕の恋人ではない。
サッキーは僕の恋人ではない。オカールは僕の恋人では…。一度絶望
に陥ると、いくら彼女たちの温もりを想像しても寂しくなるだけだった。
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いつの間にか、イベントに必死に通うようになった。Berryzの時でさえ
こんなに必死に遠征はしなかった。毎回、毎回、震え上がるような幸福
感を感じた。イベント、ライブを見た高揚感漂うまま握手会へと移る。
憧れの舞美さんが、めーぐるが、オカールが僕を覚えてくれている。向
こうから笑顔で話しかけてくれる。僕は僕の妄想以外から彼女たちに
愛を求めた。そして、彼女たちはそれを与えてくれた。あまりに麻薬的
なその儀式に、僕はたちまち溺れていった。現実の空間で彼女たちと
触れ合うことに僕は溺れていった。
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しかし、それで現実生活の寂しさが癒されることはなかった。
家に帰れば僕は1人で、誰とも口を聞かずに仕事をし、1人で夕食を取り、
1人で酒を飲み、そして1人で寝るのだ。僕は時々、舞美さんがエプロン姿
で夕食を作ってくれる姿を想像した。想像の中で、舞美さんが包丁で指を
切らないかはらはらしたりもした。僕はその想像にいつものように、不思
議なおかしみと哀しみを感じた。あまりに現実とかけ離れた妄想。こんな
低収入で借金だらけの僕が家庭など持てる訳がない。ましてや舞美さんと。
しかし、僕はそんな妄想に耽り続けた。
めーぐるにはその種の妄想はしなかった。
めーぐると僕は妄想の中でひたすら堕落した生活を送っていた。僕らは布
団の中から動くことはなかった。僕らはただ愛を貪り、堕落を貪った。
溺れる、という感覚は(僕にとっては)めーぐるが一番相応しいかも知れない。
絶望に陥った時、誰と一緒に死ぬのかと妄想した時、そこにはめーぐるが
居た。僕は妄想の中で何度も、何度も、何度も彼女の肩を、背中を撫でた。
彼女を愛した。絶望に抗った。この場所で。
そして僕はこの場所でその画像を見た。
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現実のめーぐると妄想のめーぐるがクロスし始め、僕は混乱し、笑いたく
なったり、泣きたくなったりした。その事実は、僕の錆びついた脳の配列を
何箇所も何箇所もつなぎ変えようとした。そして僕はこうしてまた酒を飲む
しかなくなっている。全てが記憶の沼の深くに沈んでいく。
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もう何杯酒を飲んだのか分からなくなってきた。
ラス・バレンバーグの"Suave De Samba"が流れている。
めーぐるが恋愛をするということは、僕が妄想や自慰行為をすることと同じ
くらい自由なことなのだろう。僕はそれを止めることなどできはしない。
だけど、僕は最後の最後でまだ大人になりきれない。
夢で、恋人のままでいさせて。