何も言えなくて
噛み付き合いたい。血を流したい。
と、いつも狂気じみた妄想へ引き込まれてしまう。
僕は「梨沙子と結婚したい」とあまり言わないし(他のメンバーでは言いまくる)、
なんだか梨沙子を前にすると直接的な欲求に支配される。そして、想像力の及ば
ない世界が一番危険なものであろうことを、僕の身体も察知し出す。
どうも、梨沙子には恋をしない方が良いみたいだと身体が理解しているような気
がする。想像の中で触れることさえにも不自由な梨沙子に僕はどうしようもない
苛立ちと甘美さを食む、思う。
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僕は肉体を伴ってしか彼女に恋をすることは出来ない。
それは今の自分への大きな否定であり、愛からの拒否である。しかし、知りたい
心が大きくなる度、僕は彼女にぶつかりたくなる。僕が克服すべきは雅ちゃんコ
ンプレックスではなく、梨沙子コンプレックスであるのかも知れない。梨沙子の
ことを考えると、自分にとっての無意味に対する理解を毎秒強制させられる。
どうにも苦痛でしょうがない。
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だから、僕は梨沙子に恋なんてしない。
僕は永遠に梨沙子にラブレターも書かない。書ける訳がない。
梨沙子、梨沙子。
名前を呼ぶことしかもうできない。