性の悩み
K君と話した時もつくづく感じていたことだけど、あの子達を求めながら
も、あの子達を見続けることを望みながらも、それが苦しくて苦しくて
たまらない。夜中に写真を見ていると狂気に似た感情がやってきて、僕は
震えだしそうになる。とてつもなく大きな欲望に自分の全てが飲み込まれ
そうになる。僕はその欲望の渦の前には全くの無力で、その事実を前に
僕はまた絶望することになる。
いつまでもいつまでも同じ事の繰り返しで、欲望だけが不相応に大きくな
っていく。まるで牢獄の中にいるような気がする。鉄格子を掴んで、叫ん
でも、いくら叫んでも誰の耳にもそれが届くことはない。K君は「僕は、
あの子のほくろの位置だって知っているのに」と言った。僕もそう思う。
僕もそれに触れたいと思う。触れたくて、真夜中に気が狂いそうになる。
触れたとしてもそれはただの紙やビニールの感触でしかない。でも、僕は
それに触れるしかない。あの子の頬をなぞるしかない。
K君とは「雅ちゃんにキモいと言われること」についても話した。そうだ。
僕らは気持ちの悪い人間なのだ。そして、その気持ち悪さから逃がれられ
ないことを僕らは毎日のように思い知らされている。
僕はいい加減な人間だから、そういうことは見て見ぬ振りをして、適当に
騙し騙しこれまでやって来た。そして多分これからもそうするだろう。そ
れと付き合いながらやっていくしかないのだろう。それはもう昔から分か
っていたことなんだけど。
□
僕が不安なのは、僕の中で狂気が段々その力を増して行っているからなの
かも知れない。言語にならない、意味不明な、原始的な欲望の度合いが現
実的意識の中に、日に何度も入り込んでくる。獣の意識が人間的な意識を
追いやっていく。僕がそれに対処する方法は、欲望を解放させるか、ある
いは知らない振りをして誤魔化すかしか無い。
そんなことを毎日繰り返している内に、狂気的な傾向はますます強まって
いるような気がする。それと同時に、彼女達に対する言葉を、ほとんど唯
一の感情の伝達手段である言葉を僕は失いつつあるような気がするのだ。
そして僕はまた彼女達から遠ざかっていく。どうしようもなく、暗い。