サッキーとアフリカ
暗黒大陸と言う言葉通りにそこは暗かった。
いや、僕の視界が暗いだけかも知れない。それともこの暗さは砂漠の砂
によるものなのだろうか…?地平線に目をこらしても空と砂漠しか見え
るものは無かった。僕は、宿舎である神殿のような建物の中に入った。
なぜ建物はそんなかたちをしているのか、何のために僕はここに宿泊し
ているのか、いつ僕はここに来たのか、全て分からなかった。僕に分か
るのはただそこがアフリカだと言うことだけだった。
神殿の中も暗かった。たいまつが静かに揺れていた。
僕は広間に入り、テーブルに着いた。僕の隣の席にはサッキーが居た。
前の席には梅さんが居た。テーブルにはビールや美味しそうな食べ物が
用意されている。梅さんはこっちを何かうずうずしたような表情で見て
いる。その表情を見ている内に、僕は彼女達に昔話をする約束をしてい
たことを思い出した。そして、僕は語り出した。
たいまつの光がサッキーの綺麗なまつげに陰を作る。
彼女は僕の昔話に集中し、静かに想像を働かせているようだった。僕は
話を続けながら、彼女の表情に少しずつ、少しずつ引き込まれていくよ
うな奇妙な感覚を覚えた。まるで、反対に僕自身が彼女の昔話に耳を傾
けているような。
なんだかとても気持ちよくなって、彼女の輪郭が視界に曖昧にとろけて
いく。サッキーが一枚の絵のように見える。そして意識は途切れる。
□
僕は今夜もその世界へ行くことを望む。
帰って来られなくても構わない。