パラレル・ワールド
いつの時代か分からない。
見たこともないが懐かしい風景。田舎の匂いがした。
僕はその場所で出会った女の子と抱き合い、肌と肌を合わせていた。
僕は、温かい、と呟いた。本当に温かかったからだ。それは僕が長
らくずっと求めていたものだった。彼女と抱き合いながら、僕はそ
れが永遠に僕のもとを離れないように願った。そして、かつてそれ
が失われた時のことを思い出すと胸が痛んだ。
当然、起きると彼女は居なかった。
真夜中で僕が最初に顔を合わせることになったのは無機質なモニタだ
った。モニタに向かい、ヤフオクの取引についてのいくつかのメール
を返信すると、僕にはすることがなくなった。
現実的に殆ど女性と何の関係も持ってはいないが、直接的な欲求だけ
が日々大きくなっていく。それをあの子達に求めるだけの想像力や無
邪気さは今の、真夜中の僕にはない。自分が捉えた空虚な現実がそこ
に拡がっているだけだ。
うわごとを繰り返すように、夢の中の温もりを延々と思い出す。
少なくとも、それが欲しいという意志をまだ僕は持っている。