廃墟
ここも、とても良い感じに廃墟化してきている。
事実僕の中にはもう殆ど何も残っていない。写真を買うことくらいしかやるべき
ことが見当たらない。毎日毎日が空虚で、恐ろしく寂しい。好きな音楽に感動し
た時も、僕の周りには誰も居ない。遠い昔の恋人のことを思い出す。
それでも今日買ってきたハロプロタウンを眺めていると心は和む。
オカールのラ・フランスタウンへ行きたい。オカールはこんな空虚な僕を見たら
何て言うだろうか…。いや、オカールはいつものようにきっと自分の喋りたいこ
とだけ喋るだろう。そして、僕はそんなオカールを見ているととてもホッとする。
でも、この「みんな大好き」シリーズ自体が見ているとホッとする。
きっとみんなは何一つ変わっていなくて、僕が変わったのだろう。それを少し寂
しく思う。昔のことを思い出すことが段々多くなってきた。あの頃、僕はあんな
風に加護ちゃんのことを、よっすぃーのことを、まりっぺのことを好きだった…。
今の僕には断片的な記憶の集積しかない。それをつなぎ合わせて推理することしか
できない。ものごとの大きな流れを把握することができない。日常生活でも著しい
記憶力低下に悩まされている。なんだか頭の奥に大きなもやのようなものがあって
それがずっと取れないでいるのだ。
□
僕は誰が好きなのかも分からない。
昔みたいに「今は……かな」みたいな受け答えもできない。今の僕には連続性のよう
なものが全く無い。ただどうしようもない寂しさと空虚さだけが砂漠のように続いて
いる。僕はふらふらと歩きながらオカールのことを思い出したり、友理ちゃんのこと
を思い出したり、舞美さんのことを思い出したりする。
それでも砂漠は続き、終わりは見えない。
砂に埋もれて友理ちゃんの夢を見ている方がずっと楽なような気がする。事実、夢の
中の僕は現実よりもずっと活き活きしている。その場所では雅ちゃんに向かってずっ
と言いたかったことも言える。それがいつも哀しい結末だったとしても、僕は想いを
伝えることができる。
僕はどこか死に場所を探しているのかも知れない。