Within You
仕事が終わってまた妄想。
めーぐるが冷えた缶ビールを持ってきてくれる。彼女がターンテーブルに乗せたのはルイス
・カルロス・ビーニャスのライブ盤。僕はソファに沈み込んでプルトップを開ける。つまみ
をテーブルに用意しためーぐるが横にちょこんと座る。白い肩。
肩に触れながら、今日の現場はどうだったとかとりとめもない話をする。
めーぐるのビールの飲み方はとても上品だ。変哲のない缶ビールでさえ、めーぐるの手に触
れている瞬間は輝きを増す。めーぐるはあの大きな瞳で僕の話を聞いてくれる。めーぐるの
豊かな表情を見ていると、それだけで会話をしているような気になる。頷いたり、相づちを
打っているだけなのに。
心地良い沈黙。
□
気に入った曲が流れると、たまにめーぐるはメロディをハミングする。
僕は何の曲がかかっていようと、その小さな鼻歌に耳を澄ます。それが一番美しい音楽だと思う。
彼女の意識は現実から微かに離れつつあるように見える。それとも彼女は何かを想い出している
のだろうか。僕はたまらずに彼女の感覚を追いかける。
メロディーを追う僕の存在に彼女は気づく。でも彼女は微笑んで、静かに唄うことを続ける。
□
彼女がメロディーのどの部分に最も痛みを感じているのかが分かる。
僕の声もそれに続く。次第に二人の声はハーモニーを取り始める。僕らはより強くそれを感じたい
と思う。声が絡み合う。彼女と僕の最大の痛みは過ぎ去り、曲は収束へ向かっていく。僕らは再び
その痛みに向かうことを望んでいる。全ての感覚は甘く溶け合い、僕らはいつまでもそれに耽る。
□
やがて沈黙と太陽がやって来る。
僕は彼女の胸に手をやって、心臓の音を確かめる。その心音と静かな寝息は僕をどうしようも
なく安心させる。心の中でめぐみ、と名を呼ぶ。美しい音楽が止まないように、静かに。
めーぐるが冷えた缶ビールを持ってきてくれる。彼女がターンテーブルに乗せたのはルイス
・カルロス・ビーニャスのライブ盤。僕はソファに沈み込んでプルトップを開ける。つまみ
をテーブルに用意しためーぐるが横にちょこんと座る。白い肩。
肩に触れながら、今日の現場はどうだったとかとりとめもない話をする。
めーぐるのビールの飲み方はとても上品だ。変哲のない缶ビールでさえ、めーぐるの手に触
れている瞬間は輝きを増す。めーぐるはあの大きな瞳で僕の話を聞いてくれる。めーぐるの
豊かな表情を見ていると、それだけで会話をしているような気になる。頷いたり、相づちを
打っているだけなのに。
心地良い沈黙。
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気に入った曲が流れると、たまにめーぐるはメロディをハミングする。
僕は何の曲がかかっていようと、その小さな鼻歌に耳を澄ます。それが一番美しい音楽だと思う。
彼女の意識は現実から微かに離れつつあるように見える。それとも彼女は何かを想い出している
のだろうか。僕はたまらずに彼女の感覚を追いかける。
メロディーを追う僕の存在に彼女は気づく。でも彼女は微笑んで、静かに唄うことを続ける。
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彼女がメロディーのどの部分に最も痛みを感じているのかが分かる。
僕の声もそれに続く。次第に二人の声はハーモニーを取り始める。僕らはより強くそれを感じたい
と思う。声が絡み合う。彼女と僕の最大の痛みは過ぎ去り、曲は収束へ向かっていく。僕らは再び
その痛みに向かうことを望んでいる。全ての感覚は甘く溶け合い、僕らはいつまでもそれに耽る。
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やがて沈黙と太陽がやって来る。
僕は彼女の胸に手をやって、心臓の音を確かめる。その心音と静かな寝息は僕をどうしようも
なく安心させる。心の中でめぐみ、と名を呼ぶ。美しい音楽が止まないように、静かに。