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帰り際のKさんの一言を思い出しながら、救いと絶望の狭間に居た。
あの子達の歌声を何よりも聴きたいと思いながら、それを自分だけ
のものにしたいと思う。封印したいと思う。
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毎日走る上野の山。そこから少し外れた高級住宅街。
僕はその家の美しい造形を眺めながら走り、カーテンの向こうに舞美さんを想像
する。iPod Shuffleの中に居るまいまいDJは、バーデン・パウエルのレコードを手
に取る。僕はこんな家で舞美さんとジャズを聴いて過ごせたらどんなに素敵なこと
だろうと思う。しかし表札にかかっているのは*田さんの名字であり、矢島舞美さん
では無い。でも、舞美さんはこんな家に住んでいるのだろうと僕は妄想する。
ニケェルイズァニケェルダイムイズァダァイム…。
とジャニス・ジョプリンが歌っていた。現実は現実で何も変わりはせず、のめり込めば
のめり込むほど舞美さんから離れていく。いつまで一緒にいられるんだろうと思う。
舞美さんの声が欲しい。舞美さんの温もりが欲しい。
ふと手にする舞美さんマグネットは今の僕にはあまりに限定的で、余計に寂しくなる。
煩悩にまみれた僕は、数日後のことを想像してよだれを垂らしながら眠る。