まいまいのプレイリスト

今日はまいまいと手を取りあいながらプレイリストに好きな曲を1曲ずつ
ドラッグ&ドロップしていた。まいまいと僕の共同プレイリストに好きな
曲を交互に入れていくのだ。僕は考えずにほいほい曲をドラッグしていく
のだけど、まいまいはまだ読めない字が沢山あるので、迷ったり僕に字の
読み方を聞きながらドラッグしていく。
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そんな風にしてまいまいが選んだカル・ジェイダーの"Aquarius"から流れ
出したイントロを聴いて僕は激しい眩暈に襲われた。これは………これは
僕が高校生の頃に買ったア・トライブ・コールド・クエストの「ミッドナ
イト・マローダーズ」の1曲目のイントロだったっけ……?
僕はそんな風に甦った記憶のたった一滴に、どうしようもなく混乱した。
確かあのアルバムではここでスクラッチ・ノイズが聞こえて、2曲目へ入
っていくはずだ。確か、"Steve Biko"。でも、曲はそのまま気だるくルー
プを続けた。ループの中から呼び起こされる記憶は次第に人物のかたちを
取り始める。みんな、もう会うことのない人達ばかりだ。
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僕は悲しくなってまいまいを見つめるけど、まいまいはもうそこには居な
い。彼らにまいまいを紹介したら、どう思うだろうか。僕の気は狂ったと
思われるだろうか。いや、それよりも僕はまず、彼らに、僕がいかにして
このようになったのかを説明しなければならない。しかし、そのことを
考えると途端に深い記憶への回路は閉じてしまう。
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ループはいつの間にかボビー・ハッチャーソンの"Montara"に変わる。
言葉は何一つ出てこない。僕は何かに大きく絶望している。
大きな絶望は、沈黙と時間によってしか癒されないのかも知れない。
それも、相当に長い間。