Muito a Vontade
最近、何の音楽を聴いてもやたらと良い。
カル・ジェイダーのバカラック集、ダブのコンピ、トニー・ライス・ユニット、ダ
グ・カーン・トリオ、マーク・エリック、スタックリッジ、プレスリー。めちゃく
ちゃだけど、何を聴いてもうっとりしたり、悲しくなったり、興奮したり、幸せに
なったりする。幽玄のようなものも…?ユージン・マクダニエルス。
□
ホッピー3杯目でルイス・カルロス・ヴィーニャスのライブ。
iTunesが無ければ、こんな聴き方はできなかっただろう。
メドレーでドナートの"Muito a Vontade"に流れる瞬間、ヴィーニャス自身なのか
どうか分からないけど、誰かピアノに合わせて歌い始める。このライブ盤は、どこ
にマイクがあるのか分からないほどギャラリーの歓声と演奏が一体化しているのだ。
1970年に「フラッグ」というクラブで録音されたものらしい。場所はどこだろう。
コパカバーナなのだろうか。
カチン、カチンと連続するグラスの音は、誰か演奏に合わせて叩いているのだろうか。
歌い出す者も数人。ギャラリーの熱の高まりに合わせてヴィーニャスのピアノはさら
に歌いまくる。なんて素敵な空間なんだろう、と思う。
この空間にキッズと一緒に居られたら。
みんな、一列に並んでハロコンを見学していた時のような、あんなポカーンとした表
情をするだろうか。それとも、眠くて寝てしまうだろうか。…いや、それはないよう
な気がする。音の響きからして小さそうなその「フラッグ」で、これだけの熱の籠も
った演奏を見せられて寝ていられる訳がない。
このアルバム名は「ノー・フラッグ」と言う。
素敵だと思わないかい、オカール?
□
どうしてこんなに美しいんだろう。
このアドリブについていくみんなの鼻歌が聴きたい。オカールや、雅ちゃんの鼻歌を。
梨沙子はそのまま歌い出してしまうかも知れない。しみハムは洗濯物でも畳みながら、
ラジカセからちょっとした音量で流れるそのメロディーに合わせて。茉麻ともし酒を
飲んだら、酔っぱらってこの曲をリピートし続ける僕につきあってくれるだろう。
もしかしたら舞波の悲しみはこんな………。舞美さんの美しさは。
□
僕も同じようにグラスをカチン、としたいけど周りには誰も居ない。
いつでも全力を尽くす舞美さんが酒を覚えるのはいつなんだろう。酔っぱらった母を
見て呆れ、俺が一生酒を飲むことはあるまいと思っていたのが丁度舞美さんと同じ年
の頃で、それを考えるとまた茫然としてしまう。
舞美さんや、めーぐるや。
このような音楽とみんなの笑顔に囲まれていると、僕は底無しに酒を飲んでしまう。
気持ちよくて、気持ちよくて。悲しくて、悲しくて。
長い脚をくずして座っている舞美さん。普段は正座なんてしているのだろうか。
ギャラリーとヴィーニャスのピアノの熱はこの部屋にも波及し、僕のつまらない馬鹿
話にも彩りを与え、そして舞美さんの笑顔が咲き始める。
お互いの心臓の音色は、ジャズ・サンバまではいかなくとも早めで、そして微かな熱
を帯びている。僕は舞美さんの髪に触れたいと思い、しかし、その表面には薄く綺麗
な透明の膜がかかっている。
□
急に思い出した。
バーデン・パウエルが空港で恋人を待ちながら、会えないと知り、バラの花束を抱え
て号泣したエピソードを。僕も舞美さんにバラの花束を渡したい。
□

Luiz Carlos Vinhas "No Flag"
カル・ジェイダーのバカラック集、ダブのコンピ、トニー・ライス・ユニット、ダ
グ・カーン・トリオ、マーク・エリック、スタックリッジ、プレスリー。めちゃく
ちゃだけど、何を聴いてもうっとりしたり、悲しくなったり、興奮したり、幸せに
なったりする。幽玄のようなものも…?ユージン・マクダニエルス。
□
ホッピー3杯目でルイス・カルロス・ヴィーニャスのライブ。
iTunesが無ければ、こんな聴き方はできなかっただろう。
メドレーでドナートの"Muito a Vontade"に流れる瞬間、ヴィーニャス自身なのか
どうか分からないけど、誰かピアノに合わせて歌い始める。このライブ盤は、どこ
にマイクがあるのか分からないほどギャラリーの歓声と演奏が一体化しているのだ。
1970年に「フラッグ」というクラブで録音されたものらしい。場所はどこだろう。
コパカバーナなのだろうか。
カチン、カチンと連続するグラスの音は、誰か演奏に合わせて叩いているのだろうか。
歌い出す者も数人。ギャラリーの熱の高まりに合わせてヴィーニャスのピアノはさら
に歌いまくる。なんて素敵な空間なんだろう、と思う。
この空間にキッズと一緒に居られたら。
みんな、一列に並んでハロコンを見学していた時のような、あんなポカーンとした表
情をするだろうか。それとも、眠くて寝てしまうだろうか。…いや、それはないよう
な気がする。音の響きからして小さそうなその「フラッグ」で、これだけの熱の籠も
った演奏を見せられて寝ていられる訳がない。
このアルバム名は「ノー・フラッグ」と言う。
素敵だと思わないかい、オカール?
□
どうしてこんなに美しいんだろう。
このアドリブについていくみんなの鼻歌が聴きたい。オカールや、雅ちゃんの鼻歌を。
梨沙子はそのまま歌い出してしまうかも知れない。しみハムは洗濯物でも畳みながら、
ラジカセからちょっとした音量で流れるそのメロディーに合わせて。茉麻ともし酒を
飲んだら、酔っぱらってこの曲をリピートし続ける僕につきあってくれるだろう。
もしかしたら舞波の悲しみはこんな………。舞美さんの美しさは。
□
僕も同じようにグラスをカチン、としたいけど周りには誰も居ない。
いつでも全力を尽くす舞美さんが酒を覚えるのはいつなんだろう。酔っぱらった母を
見て呆れ、俺が一生酒を飲むことはあるまいと思っていたのが丁度舞美さんと同じ年
の頃で、それを考えるとまた茫然としてしまう。
舞美さんや、めーぐるや。
このような音楽とみんなの笑顔に囲まれていると、僕は底無しに酒を飲んでしまう。
気持ちよくて、気持ちよくて。悲しくて、悲しくて。
長い脚をくずして座っている舞美さん。普段は正座なんてしているのだろうか。
ギャラリーとヴィーニャスのピアノの熱はこの部屋にも波及し、僕のつまらない馬鹿
話にも彩りを与え、そして舞美さんの笑顔が咲き始める。
お互いの心臓の音色は、ジャズ・サンバまではいかなくとも早めで、そして微かな熱
を帯びている。僕は舞美さんの髪に触れたいと思い、しかし、その表面には薄く綺麗
な透明の膜がかかっている。
□
急に思い出した。
バーデン・パウエルが空港で恋人を待ちながら、会えないと知り、バラの花束を抱え
て号泣したエピソードを。僕も舞美さんにバラの花束を渡したい。
□

Luiz Carlos Vinhas "No Flag"