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05
2001

あんなに愛しあったのに

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朝帰り。
いつも思うのだけど、いつから人は朝帰りが寂しくなるのだろう。

なにか、妙に寂しい。肩を寄せ合って眠る男女などを見ると、特に寂しい。
窓の外の景色を見るが、それでも昔のことを思い出して寂しい。

帰ったら部屋に加護ちゃんがいれば。よっすぃーがいれば。
僕はただ抱き合う人が欲しいだけなのかも知れない。

僕はふと、エドゥ・ロボの歌う"Hey Jude"を再生する。
部屋には誰もいない。一年前にはここに、僕の他の誰かがいたのかもしれない。
そして僕はその誰かと眠っていたのかも知れない。その眠りは完璧で、誰からも
邪魔されることなく、永遠に機能していた。ミシェル・ルグランの名前は知って
いても、僕らはその音楽はあまり知らなかった。



今、加護ちゃんはきっと、「ロシュフォールの恋人達」の完全盤を。
ルグランの弾き語りのデモを聴きながら僕の帰りを待っているのだ。
猫みたいに、寝っ転がって柱に爪で傷を付けながら。

ダサい水玉のパジャマを着ながら、加護ちゃんは言うのだ。
「お兄ちゃん、お酒くさぁ~~い」

そして僕は歯磨きをする。念入りに、念入りに。眠いのだけど、念入りに。
加護ちゃんは、僕の吐息を検査する。その時、僕の唇と加護ちゃんの鼻が触れる。
加護ちゃんは「よし!」と言う。

僕は時計を見る。時計は午前5時半を指している。
加護ちゃんは、僕を布団に招き入れる。布団の中はとても暖かく、僕はTシャツを脱ぐ。
加護ちゃんも、パジャマを脱いでTシャツだけになる。

MacのiTunesからは、グールドの弾くイギリス組曲第5番ホ短調が流れている。
それが寝るためにふさわしい曲なのかどうか、僕らは考えるには疲れすぎている。
ともかく僕と加護ちゃんは抱き合う。

そしてキスをする。

そして僕らはそのまま永遠に目を醒ますことはない。
火山の噴火で、海底に埋もれてしまったどこかの王子と王女のように。

音楽だけが、その後に残った。