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30
2004

梨沙子

CATEGORY梨沙子
今日は梨沙子が家に来たんだ。

梨沙子はまるで犬みたいに僕の肩に鼻をくっつけたりする。

僕が戸惑うのにもお構いなしだ。かと思えば、流れている曲に合わせて歌いだ
して、それがとんでもなく可愛く、美しい歌声だったりする。でも、もう一回
歌ってって言うと、梨沙子は照れてしまって歌わなくなる。

梨沙子の白い白いほっぺたに、ほんのりと赤が差す。
僕が返さなくてはいけないメールの返事をしている間に、梨沙子は僕の部屋に
転がった漫画を手に取ったり、ごろごろ転がったりしている。梨沙子が即興で
作曲したであろうその鼻歌に、僕はゆっくりと、確実に魂を奪われている。

頭がぼうっとして、背筋に力が入らなくなり、夢の中にいるようだ…。

…梨沙子が眠ってしまってから、僕は僕の音楽を聴き始める。
僕が子供だった時に、その場所に存在しなかった少女に対して僕はこんな歌を
捧げたいと思っていた。僕は、多分梨沙子にこの歌を捧げるべきだった。

振り返り、梨沙子を見る。
梨沙子はこれから何を失わなくてはならないのだろう。
そして、僕は梨沙子をどこまで守ることが出来るのだろう。

時が止まればいいと思う。
彼女の無垢さや、無邪気を永遠に自分の中に留めておきたい。
しかし、その欲望は梨沙子の純真を酷く傷つけることのような気がしてならな
い。


梨沙子、梨沙子。
どうしたらいいのか分からなくなり、僕は梨沙子の名前を心の中で呼び始める。

もう、きっとどこにも出口は無い。僕はまた迷い込んでしまったのだ。