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23
2004

真夜中のみやびちゃん

CATEGORY雅ちゃん
ハリトーノフ対シュルト戦をスカパーで見る僕とみやびちゃん。
マウントから肩を膝で抑え、シュルトの顔面へ鉄槌を下ろすハリトーノフ。
僕はみやびちゃんの目を手で覆った。「…ちょっと、見えないんですけど!」
怒るみやびちゃんの声を無視し、僕だけがその試合を見続けた。

みやびちゃんが画面を見た時、もうシュルトの顔は映らなかった。
「もう、うたかのバカ!!!」みやびちゃんは、結構本気で僕の胸を叩いた。
僕は何も言えなかった。でも、僕はそれを見せてはいけないと思った。

みやびちゃんは眠っていた。
僕は、みやびちゃんの友達が呼ぶ「みや」の発音を思い出した。
みや、みや…。そのそれぞれの音の美しさに、もしかすると、僕はみやび
ちゃんの名前すら呼んではいけない存在なのではないか、と思った。

僕は心の中でみやびちゃんの名前を呼んだ。
みや、みやび、みやびちゃん、雅。その名前を呼ぶ声は、僕のものなのか、
僕のものでないのか分からなかった。もし僕が名前を呼んだら、彼女の耳
にはどう届くだろう。どう届くにしても、彼女は眠っている。僕の居ない世界
の夢を見ている……。

僕はしばらくして、その部屋から出ていく。
鍵を閉める時の篭もったような音が、頭の中に残る。あの部屋で、みやび
ちゃんはいつ起きるだろう。そしてまず、何を考えるだろう。そんなことを
考えながら、僕の脳は駅までの道さえもあやふやになっている。みやび
ちゃんに寄り掛かりたい。でも、今みやびちゃんは僕の隣には居ない。

もしかすると、もうみやびちゃんには会えないのかも知れない。
そもそも、僕は最初から一人だったのかも知れない。だけど僕の歩は
駅(であるだろう)方向へと向かっている。僕はもう戻ることは出来ない。
朝の、白く冷えた空気の中で、僕はまた一人になる。