りななん
りななんが死んでしまった。
第一報を見た時、僕は悪質なデマだと思って顔をしかめた。
PCを新調し、RSSリーダーをインストールして最初の画面に出てきたのがそのニュースだった。
見慣れぬフォントで表示されたその一文は、どこか遠い未開の地の呪文のようにも見えた。
りななんが、死んだ?
僕にはそのことがうまく理解できなかった。
今もこれを書きながら理解できていない。
仕事中もずっとそのことを考えていた。ニュースを検索すると、画面がその情報で埋め尽くされた。
僕はそれを全て読んだ。リロードしてまた読んだ。
りななんが死んでしまった。
その情報が書いてあることは分かった。しかし、いつまで経っても僕はそれをディスプレイの中の情報としてしか受け取れなかった。なぜ、りななんが死ななければならないんだ…?
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6年前、僕がハロプロから離れた頃。
りななんは、新しい世界で、僕が初めて好きになった人だった。
新しい世界は全てが新鮮で、みんな可愛くて、優しくて、温かくて、本当に楽しかった。
スタッフとヲタでさえも仲が良くて、そんな世界があることに衝撃を受けた。
もう今はわだかまりもないけど、その頃の僕はハロを巡る状況に個人的に深く絶望していたから、本当にエビ中の全てが輝いて見えた。
いつも素朴で、手作りで、温かいイベント。
ハンドクラップだけでメンバーの入場を待つ瞬間がとても、とても好きだった。
でも、握手会や2ショットでは、それまでのハロの高速モードに慣れすぎて、ゆっくり話せても何を話していいのか分からず、いつもろくなことを言えず、戸惑っていた。そんな中でも、いつも優しくしてくれたのがりななんだった。おっとりしていて、波長やリズムがあったのかも知れない。
ガチガチに緊張している僕を、いつもりななんは笑顔で迎えてくれた。
その笑顔は僕を安心させてくれた。その笑顔は「よそもの」であった僕に、ここにいてもいいんだよって言ってくれている気がした。そう思わせてくれる位、嘘のない、自然な笑顔だった。
楽しいイベントが終わる時、この曲を聴く度に切なくなった。
またりななんに会いにいくよ、といつも思った。
不器用で、嘘がつけなくて、でも一生懸命で、いつもニコニコしているりななんに。
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エビ中の客数は飛躍的に増え、スモール・サークル的感覚は失われ、いつしかりななんに会いに行かなくなった。僕はその頃、みにちあに夢中になっていた。
それでもたまにイベントに行くと、りななんは僕の名前を覚えていてくれたりした。
アイドルとして大きく成長しても、りななんの優しさは変わらなかった。
最後にりななんを見たのは2015年のルミネエストの屋上イベント挨拶だった。
昔はおっとりしていたりななんが、こんなに饒舌になったんだ、と思った。
良く喋っているりななんはちょっと酔っているようにも見えて、なんだかそれがりななんらしくて可笑しかった。最後に会ってから2年経っているし、忘れられていると思って声はかけなかった。
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僕はいつも酔っ払って死にたいと呟いたり、このまま目が覚めなければいいと思っている人間だ。
りななんの無念を考えると、そんな腐敗した精神じゃ絶対に駄目だと思う。絶対に駄目だと思うけど、優しいりななんはニコニコしながら、それでもいいんじゃないですか?って言ってくれそうな気がする。りななんの優しさはそれくらいなんだ。いつも無邪気で、無意識で…。
その記憶は今でも僕を温めてくれる。
きっと、これからもずっと。りななんと過ごしたあの日々は宝物だよ。
りななん、さようなら。
りななん、安らかに。