舞美さんに敗北すること
午後から仕事なので夜更かし。
明け方に、抽選のことを思う。ハロプロカード3000pt特典の好きなメンバーとの
2ショット写真抽選。写真厨だった頃ならすぐに貯まっていただろうに、自分は
つくづくタイミングの悪い男だと思う。でもなんとか貯めた3000pt。迷うことなく
舞美さんに申し込んだ。午後まで眠って、起きてメールが届いているパターン
が一番楽だ。起きていても抽選結果のことばかり考えていて何も手に付かな
いだろうから。
が、起きても結果のメールは届いていなかった。
2chのスレを覗いてみても全く動きがなく、誰にも届いていない様子。
そわそわしながら仕事に入り、結局メールが届いたのは仕事終了間際の22時
だった。当選の文字が目に入るまでの間、息を止めた。そして当選を確認した
後、少し震えた。
一時期、ずっと抱いていた舞美さんへのネガティブな妄想はようやく消え去った。
今は現場に行く度、舞美さんのことを好きだと思う。舞美さんに作ったコンピを
聴く度に舞美さんのことが好きだと思う。
僕は今まで好きになったアイドルと妄想の中で自分だけの物語を創り上げて
きたけど、舞美さんにはそうした僕の今までのやり方が通用しなかったように
思う。うまく想像することができないし、想像できたとしてもそれは断片として
そこに存在しているだけだ。それでも僕は舞美さんに強く引きつけられ、舞美
さんのことばかり考えてしまう。
たぶん僕はそのままの、ありのままの姿の舞美さんが一番美しいと感じていて、
そのままの舞美さんが一番好きなのだ。僕の妄想は敗北したのだ。そして僕は
その敗北をとても甘美なものに感じている。僕は舞美さんに負けたんだ。
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あまりに長く妄想とともに生活し続けていたせいか、そのような関係が僕には認
められなかったし、苦痛だったのだろうと思う。だから僕はネガティブな妄想に入り
込んでしまった。そこからどう抜け出せたのかどうかはもう忘れてしまった。それは
多分、ほんの些細なことだった。
今も音楽を聴きながら舞美さんのことを考えているけど、やはりそれは物語へと
結びつかない。僕は美しいメロディーを頭の中で追いながら、舞美さんの存在を、
その生理のようなものを想像するだけだ。
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撮影日は12月14日で、僕の誕生日の10日前。
凡庸極まるコミュニケーション能力しか持たない僕はそれを舞美さんに言ってしまう
かも知れない。もしそうしてしまったら、純朴過ぎる舞美さんの「おめでとうございま
す」の罠が待っている。そんなちっぽけな一つ一つの想像が幸せでしょうがない。
早く舞美さんに会いたい。