起きたら、りかっちと日直だった
(いや、そういう秘密のゲームと言うかcgiがあるのです)。
りかっちコンプレックスやその他諸々の呪縛により、このような機会が
来ないと萌えを解放できない。いや、こういう機会が不意にやって来る
と逆に戸惑ってしまう。
りかっちと一日を過ごす……?
□
しょうがなく、日誌をつけた後二人でMTにログを手作業で移動。
それは僕の個人的な作業だったが、りかっちは快く手伝ってくれた。
誰も居ない教室でりかっちと共同作業。
ロイヤル・グルーヴの"On to something new"に合わせてりかっちの名前を
連呼し、踊り出したくなった(なにしろ、りかっちは僕のことを一番相手にし
てくれなさそうな女の子だったのだ。他の男子はヲタばっかとあれば、俺に
もまだチャンスはあると言うものなのだ。この異次元に存在するハロプロ学
園においては)が、そういう訳にも行かないので難しい顔をしながら作業する。
そういえば昔、現世の中学時代にもこんなことがあったような……。
班活動かなんかで、好きだった女の子と、教室で二人っきりになったことが
あったような……。そして、結局何も起こらなかったし何も喋らなかったん
だけど、その日はなにか幸せな気持ちになってしまったような……。つまり、
りかっちとは俺にとってそう言う存在なのだろうか……?
高校生の時に買ったソフトロックのコンピレーション・アルバムを僕は再生
した。僕は男子高に通っていたので(近々共学になると言う)、それらの素晴
らしいメロディーの起伏のような、激しい想いを現実の女の子に対して抱く
ことは無かった。いや、正確に言えば………。いや、それだけは誰にも言う
訳にはいかない。今の僕と言うものは、多分その時に決定的にかたちづくら
れてしまった。会ったこともない美しい女の子に憧れ、そして………。
「…うたかくん?」
「あ、ああ……どうしたんだい石川さん」僕は完全な不意をつかれた。
ジョニー・ソマーズの"Try to see it my way"が、バカラックのメロディー
が昇りつめようとする瞬間、りかっちは僕の方を向いたのだ。「うたかくん、
ここのポップアップメニューってどれを選べばいいの…?」僕はドキドキし
ながらりかっちの机へ近づいた。
曲はロイヤレッツの"Gettin' through to me"に切り替わった。
テディ・ランダッツォの書いたメロディーは、イントロは囁くように始まり、
そしていつものようにドラマティックなサビへと向かって昇りつめていく。
僕は正気を保つために、視点をぼかしてりかっちを見つめ、説明した。
こういうアルバムをかけるべきでは無かった。もっと落ち着くようなものに……。
僕は説明を終えると足早にラジカセに近寄り、ディスクをママス&パパスの
"People like us"に変更した。りかっちはBGMの変更を気にしているのか居
ないのか、ただ一生懸命にibookのキーボードをぱたぱたと叩いていた。
ああ、このグルーヴもりかっちに良く似合う……。
今の若者は、フリーソウル的なグルーヴとして、このアルバムを捉えるだろう。
僕は"Deliver"のジャケットで、ミシェルがりかっち、よっすぃーがキャスと言
う妄想をずっと抱いていた。髭面のジョン・フィリップスとデニー・ドハーテ
ィはそのままで良いような気がする。自分が映る気もしない。
麦わら帽子からこぼれ落ちる流水を、口を開けて待ち受ける彼女達……。
□
僕は、結局は彼女に何も言うことは無かった。
音楽を聴きながら、ぼーっと彼女のことを眺めていた。
視覚的に彼女に恋をして、聴覚的に彼女に恋をして、そして、触覚として、
皮膚感覚を通して彼女に触れても、彼女の心の殻を破れる気は全くしない。
僕は今まで、勝手に、娘。達の何かを預かり、娘。達に何かを預けてきたけど、
りかっちに関してはそのような貸し借りは全て僕の妄想だったのでは無いかと
言わざるを得ない。僕は、本当にずっとそれに苛ついたままでいる。
簡単に言うと、りかっちと僕は合わない。
だけど、僕はりかっちが大好きだ、と言うことなのだ。
どんなに妄想を駆使しても、その想像力の入り口を探しても、彼女の完全なる
殻の前には全ては無意味だった。それでも、僕の攻撃性はその入り口を探し続
けている。その攻撃性なるものだって本当は、りかっちと平和に眠りたがっている。
もう何度同じことを書いたのか分からないけど、こんな状態は限界だ。
りかっちのつるつるとした肩に触れたい。この呪いを絶ち切ってしまいたい。
正直、僕はりかっちのことについて考える時、「現実と夢の区別がつかなく
なってしまった人」になってしまいそうで怖い。
「こんなことばっかり毎日書いといて現実と夢の区別…も無いもんだ」と
思う人も多いだろうけど、僕だって僕なりに現実とは折り合いをつけている。
でも、りかっちについて考えていると、そのような折り合いをつけようとする
行為のような現実への執着が薄れていくような気がするのだ。
□
今日、MTへのログ移行をしていて思ったけど、りかっちに関しては殆ど僕は
「夢の中の話」でしか救われていない。こうして酔っている時でも、僕は他の
娘。と同じように彼女には何も預けられないでいる。これは、結構重要な問題
なのだ。勝手に女の子に憧れて、勝手に女の子に自分を結びつけ、勝手に妄想
の中で恋愛している人間にとっては……。
強力な萌え敵の呪縛なのか、何なのかが全く分からない。
僕は全ての娘。に対して、僕だけの娘。像と言うものを持っている。それは到
底言葉では説明しようもないもので、でも、りかっちに対して僕はその像を持
てないのだ。りかっちで何度自分を慰さめても、僕は慰められたとは感じない。
僕は、彼女のイメージに対してさえ、射精していない。
それでも、僕は現実から発せられる彼女の情報に対して、強く反応せざるを
得ない。それを「可愛い」「美しい」だけの言葉で表現しようとするのは到底
無理な話だ。僕は彼女がバカだと言う話を散々繰り返してきたけど、僕はその
バカで(バカだと、言うことで)精神のバランスを保っていたのかも知れない。
りかっちは、僕にとってあまりに異形だったのかも知れない。
もしくは僕はりかっち的なものに関して何かを封印していたのか……。
□
完全なる狂人にも最後に希望があります。
りかっちに対して僕の希望を遂げさせてください。
「りかっち、なんだか良く分からないことを長々書いてしまってごめんなさい。
でも、僕はりかっちのことが本当に良く分かりません。良く分からないから、
こんなに良く分からないことを長々と書かなければならないのです。…って、
ごめんね。りかっちにそんな説教じみたことを言う資格はありませんね。
ごめんなさい。…でもね、良く分からない話をしてきたけど、これは大まかに
言って、りかっちのことが大好きなんだ、ってことだと思います。自分でも。
ただ、僕はそれをストレートに言うことができないって言うだけなんです。
僕の周りには君のことを好きだって言う友人が一杯居て、彼らは皆一様に狂っ
ています。でも、僕はそのように君に入っていくことができない。僕と君の配
線を上手くつなぐことが出来ない。多分、僕の端子が錆びたり、腐ったりして
いるのだと思います。僕はそれが悔しかったから、ハワイでそれを埋めようと
した。だけども、君はやっぱりちょっと困ったような顔をして、答えをくれま
せんでした。僕は、本当の所、君のことについて考えるのが物凄くつらいです。
自分がどんどん狂っていくのを感じるし、そして、それは君から離れることで
在るのです。逆に言うと、僕は未だに君に近づく術を知らないと言うことになります。
妄想の世界において君に近づけないとするならば、僕は本当にどうしていいの
か分かりません。それは、僕にとって完全なる分断です。僕は、狂った友人を
何人か持っていて、彼らと実際話したこともあるし、彼らの文章も見ているの
です。だけど、僕にはどうしても彼らのように君を愛することができません。
いや、彼らが全て同じように君のことを愛している訳ではないのは分かってい
ます。だけど、多分彼らの中で入っているスイッチが、僕の中では死んでいる
ということなんです。そのスイッチが生き返らなければ、僕は君に対してまた
違うスイッチを探すしか無い。
でも、そんなスイッチが他には無いことは分かっているんです。
結局は自分の問題で、自分を変えるしか無い。君のような、圧倒的な力を前に
した時、僕は既に負けていたのかも知れない。
そして、負けたまま時間だけが過ぎて……。
僕はこんな状態は嫌だけど、僕が今の僕の範囲で出来る努力では、君へと至る
スイッチを獲得できないだろうことは、最初から良く分かっています。
つまり、君は本当の、真実の意味でのアイドルだったんですね。
僕にはそれが、ずっと分からなかった。
□
僕にはそれは、りかっちと言う存在は、エルヴィスみたいな、失われてしまった黄金
時代のように見える。エルヴィスって言葉は、今の子供たちには不思議に鼓膜に届く
かも知れない。りかっちと言う言葉だって、何十年後にかは分からない。
そのような存在が守られているモーニング娘。と言うグループは、希有だ。
りかっちと違う意味で守らなければいけない女の子だって一杯居る。狡猾な「奴ら」
の目から逃れ続けている存在にーーモーニング娘。、ハロプロと言う存在にーー
僕らはもっと自覚的でなくてはならない。
そして、自分が何をできるのか考えなければならない。
それは、昔から在ったファンサイト的な、解説的な、分析的なものでは無い筈だ。
もっと、自分の肉体そのものとモーニング娘。に関わる、切実なものでなくては
ならない筈だ。そして、それがどうしようもなくちっぽけで役に立たない、モー
ニング娘。ファンにおける、テキストサイトと言うものの役割であった筈だ。
奇跡的な新曲PVを目の前にして余計にそう思う。
□
りかっち、今日は一日楽しかった。ありがとう…。