休日ダイヤ
こういう時は、もう頭が痛くて痛くて限界になるまで眠るしかない。
意味の無い夢を見続けるしか無い。こういう時には、不思議と悪夢を
見ない。全てから解放されて、夢の中の僕は好き勝手なことを繰り
返している。
僕は中学時代に戻っていた。
現実の中学校は、僕の性格を随分とねじ曲げてくれた思い出したくも
ない場所なのだけど、夢の中ではそのくそったれな教師達は一人も
居なかった。僕らは学校を使って共同生活をしているようだった。
好きな時に出ていって、好きな時に帰ってくれば良い。
そこにはなんだか、キリンジの「休日ダイヤ」が流れているような気がした。
放課後がずっと続いているような寂しいような、自由なような、空気。
僕はそこで友達とマツケンサンバで盛り上がったり、しょうもない
厨房話に花を咲かせたりした。しかしその放課後の空気は、それを
素直に楽しいと言わせないなにか、予感のようなものを成分として含んでいた。
いつまでもこんなところに居る訳には行かないし、みんなそれぞれの事情が
ある。だから、僕は好きな女の子のことを引き止めることはできない。
そして、僕にはどこにも行くところは無い。
□
圭ちゃんは、なっちはどこに行ってしまったんだろう。
僕らは学芸会だか、体育祭だかで、四人でなにかの出し物をする筈だった。
圭ちゃんは張り切っていた。その出し物のタイトルには「真夏の光線」と
書かれていた。自分が何をすれば良いのか良く分からなかったが、張り切
って僕らにアイディアを説明する圭ちゃんを見て、僕はそれだけでとても
幸せな気分になった。僕はいつまでもそこに居たかった。
□
しかし、放課後の空気はその内に秘める闇と重力を徐々に増していった。
僕は圭ちゃんが、なっちがどこに行ってしまったのか、もうすっかり分からなくなっていた。
知り合いの顔は一人、一人と減っていき、僕だけがその暗い校舎をあても無く彷徨っていた。
□
物音がして、僕は現実に引き戻された。
頭が痛い。身体の調子も良くなっていないみたいだ。悪寒。鼻水がやたらと出る。
食欲も無い。無いと言うより、食べると言うこと自体が面倒くさく感じる。
でも、寝る前よりは精神は落ち着いている。寝る前よりは。
この状態に陥ると、誰とも話したくなくなる。
寂しいのに、誰とも会いたくなくなる。何もする気が起こらない。
全てを放り出してどこか違う世界に行ってしまいたい。
本当に暗くなるのは、この先何回こういうことを繰り返せば良いのかと言う事だ。
自分が何をしたいのか良く分からない。何もしたくないのかも知れない。
頭が痛い。