I Wonder What's The Matter With Me
内容は忘れたけど、また悪夢を。
時計を見ると午前1時で、その悪夢のねっとりとした感触が身体から離れず、寝られず、
しょうがなくジャッキー&ロイの"Lovesick"を再生したりしてみる。久しぶりに聴いたら
やっぱり良かった。札幌で見つけた78年のライブ盤は買っておいた方が良かったかな・・・。
・・加護ちゃんもこうして夜中に起きて、一人で音楽を聴きながら夜を過ごすことがあるのだろうか。
その時再生する音楽は一体何だろう。どんなアーティストの、どんなアルバムだろう。ああ・・・・。
もし今、加護ちゃんが隣に寝ていたら、こんな不安な気持ちににはならないだろうな。音楽を聴きなが
ら、加護ちゃんの寝顔を眺めて安心するだろうな・・。加護ちゃんは、"Lovesick"気に入ってくれるかな。
こういう精神状態が不安定な時、誰かに何かを求めてしまうのは当然のことだと思うけれど、
その誰かが加護ちゃんやよっすぃーだったりするのはどうなんだろう。当然のことなんだろうか。
僕には良く分からない。何を求めているのかも良く分からない。ただ側にいて欲しいだけなのか。
僕は加護ちゃんに側にはいて欲しいけど、加護ちゃんは僕の側に居たくないかも知れない。
だったらどうしよう・・・と本気で思う。そう思うと、ますます不安になる。無力感に覆われる。
でも、そんな僕とは無関係にジャッキー・ケインの歌声は、ロイ・クラールとのハーモニーは
あまりに美しくて、その無関係さは僕と加護ちゃんのそれを暗示しているみたいに思えてきて、
いくらメロディーに手を伸ばしても届かないのと同じように、加護ちゃんにも、やっぱり僕は
届かないのだろうと思えてきて、でも一晩寝るとそんなことはすっかり忘れていて・・・と、
ここ一年くらいずっとそんなことを繰り返しているような気がする。
今、加護ちゃんは何をしているんだろう。普通に寝ているだろうか。
こうして僕が加護ちゃんのことについて考えているのを知らずに・・・・・って普通にキショいね。
あ~あ、マジでもしもボックス開発されね~かな~・・・。そしたら、まず「加護ちゃんが僕の
同居人だったら」という所からスタートしてみたいと思う。設定的には、加護家の遠縁にあたる
俺が、急になんかの都合で加護ちゃんの世話を頼まれる設定?急に加護ちゃんが慌ただしく荷物
をまとめてやってきて?初めての夕食とかをちゃぶ台で向かい合って食べちゃったりして?
「学校って今週何回くらい行ってるの?」とかそういう所から話を切り出したりして?
(ここからマジ長いです。暇な人だけ読んでください・・)
まあテレビを見ながらぎこちなく夕食の時間は終わって、布団を敷いたりして?
やっぱ現代っ子(死語)らしく加護ちゃんは携帯をしょっちゅういじってたりして?
「こりゃあ一歩入ったコミュニケーション取るのが難しそうだぞ・・」とか腕を組んだりして?
まあそれはともかく、「亜依ちゃん、お風呂はここだから」とか言っちゃったりして?
で、加護ちゃんが先にはいることになって一人部屋の真ん中で座って待ってたりして?
シャワーの音とか響いてて「ああ・・・加護ちゃんが俺んちのお風呂に・・・」とか考えて
めちゃくちゃドキドキしちゃったりして?で、「バカバカ加護ちゃんいくつだと思ってるんだ?
俺は24だぞ?」とか意識の表層で常識人ぶりを発揮しちゃったりして?でも実は身体の全神経は
加護ちゃんの下着に向けられていたりして?「やべえ、やっぱ俺が洗うのかな・・・・でも加護
ちゃんももう14なんだし自分から「洗剤はこれですかー?」とか聞いてくるだろ普通」とか余計
な心配をしちゃったりして?でも結局干すのは同じ場所な訳だから、否が応にも見えちゃったりして?
んで、そのパンツがめちゃくちゃ可愛かったりして?14の女の子のパンツなんて見たことない
もんだからもう本当に生まれてこんなに興奮したことは無いって位に鼻息荒くしちゃったりして?
「一緒に取り込んでもいいかなー・・・」とか魔が刺したりして?「だって同じ場所に干してる
んだしいいだろ?」と自分を納得させたりして、震える手がついに下着に伸びたりして、そしたら
加護ちゃんが「ただいまー」とか帰ってきて慌てて手を引っ込めてドギマギしたりして?
「あ、亜依ちゃんお帰り」
非常事態はそれだけに留まらず、なにか加護ちゃんと同居してから妙に部屋がいい匂いで包まれる
ようになったりして?二人別々の布団に入ってるのに、なにかいい匂いが漂ったりしてきて?
んで、「ああ・・・一緒の布団で寝たらもっといい匂いなんだろうな・・・」とか考えちまったのが
運の尽きで、興奮してそのまま朝まで眠れなかったりして。「おにいちゃん、なんか今日はクマがあるね」
んで、その内加護ちゃんも打ち解けてきて、勝手に俺の本棚を漁ったりするようになったりして。
家にあるマンガを一通り読み終えちゃった加護ちゃんは、およそ興味なさそうな音楽とかMac関係の
本が並んでいる棚も試しに近づいてみたりして。本を出してパラパラめくって、また戻したりとかして。
でも、実はそこは俺のエロ本とエロビデオの隠し場所でもあったりして、加護ちゃんはついにそれを
発見して。ついでに辻加護の写真集も発見しちゃったりして。
「ヤダ・・おにいちゃんもおたく・・だったの・・・?」
実は加護ちゃんはその頃には俺に微妙な恋心みたいなものを抱きつつあって、でもそのエロ本と写真集で
一気にそれが崩壊しちゃったりして。エロ本と写真集を同時に発見したのが、なにか汚らしいものを自分に
塗りつけられたような気がして、加護ちゃんには本当にショックだったりして。
で、その日から妙に態度がよそよそしくなったりして。
「もう・・・おにいちゃんのバカ・・・加護のおにいちゃんは・・もっとやさしくて・・かっこよくて
ちゃんとしてたのにぃ・・・あんな本隠したりして・・もう知らない!ばかばか!おにいちゃんのばかぁ・・」
そんな加護ちゃんのデリケートな乙女心も知らず、俺は留守中にエロビデオ見て普通に抜いてたりして。
でも、俺も加護ちゃんに性欲を感じてはいけないと思って、それなりに気を使ってたりして。
一方、加護ちゃんも俺に憤りを感じながらも、でも嫌いになりきれなくて悩んでたりして。
で、それを辻ちゃんに相談したりして。でも辻ちゃんの独創的な回答でますます混乱して逆効果に
なっちゃったりして。で、我慢しきれなくなった加護ちゃんはある日何かを決心して。
「・・・ねえおにいちゃん、これ・・・何・・?」
振り向くと、加護ちゃんがエロ本を持って立っていたりして。
「えっ・・・・」俺は加護ちゃんの予想外の行動に言葉を失って。
「ねえ・・・なんなの?」
「いや・・・その・・・」(なんだなんだ?エロ本がバレたのは分かったが、俺は今何を求められているんだ?)
数秒の沈黙。
そして加護ちゃんの目にはうっすらと涙が。
「あ、亜依ちゃんどうしたんだよ急に」
涙が溢れ出た瞬間、加護ちゃんは俺に飛びついてきたりして。
「ばかぁ・・・・!」胸をどんどん叩いたりして。
俺は訳も分からずただ慌てて、ポケットの中に、無いのは分かっているのにハンカチを探したりして。
「どうした・・・亜依ちゃん」加護ちゃんは言葉を探すけど、なかなか見つからなかったりして。
「・・・・・」
なにか、こうして自分の感情をぶつけたら、おにいちゃんの腕の中にいたら、妙に安心して、もう
どうでも良くなってしまったりして。そもそも加護ちゃんは、おにいちゃんが「そういう人間」では
無いのは解っていて。でも、あの時はなぜか、もう一人の幼稚な自分がそれを許さなくて。
加護ちゃんはそんな風に、俺の腕の中で頭を整理しようとして。
シャツに加護ちゃんの涙がうっすらとしみて、それが少し冷たくて。
でも、その下は吐息で温かくて。何よりも加護ちゃんをこんなに側に感じたのは初めてで、今、何が
起こっているのか良く分からないけど、自分は加護ちゃんを守ってあげなければいけないという気がして。
しばらく、そのまま二人でじっとしていて・・・・。
加護ちゃんが急に意味もなくくすっと笑って。
つられて、俺も意味もなく笑って。二人で顔を見て笑って。何かは、完全に氷解して。
鼻水と涙をティッシュで拭いてやろうとすると、加護ちゃんは恥ずかしそうに後ろを向いて、自分で
鼻をかんで。そして、また笑って。
「なんか食べよっか」
「・・・うん!」
そんな変哲もない人生の中の一日・・・を過ごせたらいいなあ。